− コダーイ芸術教育研究所 設立趣意書 −

 コダーイ芸術教育研究所は、「音楽をすべての人のものに」というハンガリーの作曲家であり民族学者、教育者であったコダーイ・ゾルタンの理念を汲み、日本の音楽教育の変革を当初の目的として、1968年に羽仁協子氏が設立し、まず幼児教育現場での実践活動を開始した。日本のわらべうたを使って行う音楽教育は、その後、乳幼児の保育、教育、そして、子どもの文化活動へと広がり、参加した保育者、教育者の、子ども及び教育に対する考え方に変革をもたらしてきた。特に幼い子どもの保育、育成にあたる保育者に、一人一人の子どもの人格を尊重し、円満な人格形成を援助していく保育理念と理論を、具体的な実践として提示した。更に、方法論を深め、多くの保育現場、教育現場での実践の質を高めてきた功績は大きい。
 設立以来およそ30余年、この活動に参加してきた人達に、将来の見通しや、実践への沢山の力が与えられたと共に、その一人一人がこの活動を支え、広げていく力ともなり、まさに全員が育ててきたコダーイ芸術教育研究所である。
 今、子どもを取りまく環境、社会状況を見る時、子どもが本当に人間らしく育つことへの危機が叫ばれている。こうした状況の中で、私達が求め、実現しようと努力してきた、子ども一人一人が、真に人として尊重されて成長することが保障される、子どもの要求に根ざした美的、教育的環境を整え、すべての子どもが幸せな子ども時代を過ごし、円満な人格を形成していけるよう、またそこに関わったすべての大人も尊重されてこそ実現可能になる教育の在り方が、ますます重要になってきた。  これまでコダーイ芸術教育研究所が担ってきた役割を、さらに多くの人々の参加を得て、広く進めていくことを目的として、より強固な基盤を整えて永続的な活動として、特定非営利活動法人コダーイ芸術教育研究所として、ここに継承発展させていく。



2000年9月16日
特定非営利活動法人コダーイ芸術教育研究所